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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

一、二騎すぎた後から、また二、三騎駈けつづいて行った。

藤吉郎は、刎ね起きて、

「ごんぞ。ごんぞ」

と呶鳴った。

ごんぞというのは、彼のただ一人の若党の権三のことである。木股村の出なので木股権三と名乗れといっておきながら、藤吉郎が称ぶのは常にごんぞであった。

「あッ、何ですか」

ごんぞは、いつも主人のすぐ隣に寝ていた。召使の者の部屋といってもべつにないからであった。

「物見して来いッ。――何やら火急らしい駒が、お城のほうへ駈けて行った。時刻も時刻」

「はいッ」

ごんぞは、寝衣に太刀を持った身なりで、すぐ戸外へ出て行った。

ごんぞは、直ぐ戻って来た。

主人の藤吉郎が、雨戸を開けて、縁先から夜空を仰いでいたので、ごんぞは、庭へ廻って両手をついた。

「見て参りました」

「何の早馬だ」

「美濃境から次々の急使と見えました。何事が起りましたやら――」

「美濃路から?」

と、彼はまた、夜更けの空へ眼をやって、

「御被官の使いか。または、美濃の斎藤家の使いか」

「美濃衆の早馬も見え、御当家の被官衆の使いも行ったように思われます」

「そうか」

頷くと、彼はすぐ、寝衣の帯を解いていた。