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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

「……?」

兵蔵は、愕いて、ちょっと絶句してしまった。身寄り縁者の人々も驚き顔を見合わせた。聟どのの藤吉郎も、思わず、庭ごしに横を見た。

召使の者であろう。

「誰だッ」

と、その悪戯者を、家の横から叱っていた。

すると、垣の外の人影は、なおも猿楽能の謡口調で、

「――抑、これは、九州肥後の国、阿蘇の宮の神主友成とはわが事なり。われまだ都を見ず候ほどに、このたび思いたちて上り候。またよきついでなれば播州高砂の浦をも一目見ばやとぞんじ候」

朗々と、そう云いながら、男は厚顔しくも庭木戸をあけて、中へはいって来るのであった。

つかつかと、藤吉郎は、われも忘れて、花聟の座を離れ、縁先まで歩いて行った。

「おッ。犬千代どのではないか」

「聟どのか」

顔をつつんでいた麻の頭巾を払って、前田犬千代は、

「水掛祝いに来た。さっそくの水掛祝いじゃ。通ってもよいか」

藤吉郎は、手を打って、

「よくぞ来てくれた。上がってくれ、上がってくれ」

「友達も大勢従えて参ったが、よろしいかの」

「よいとも。何の仔細があろうぞ。杯は今すんだ。こよいから某は当家の聟でござれば」

「よい聟取ったな。又右衛門どのからも一献もらおう」