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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
「さ。……そこがだ」
犬千代は、声をひそめた。
妙な恋仇である。
ひとりの寧子を、二人で想い合ってから、いつかこの二人は、恋仇という相対的な関係から、反対に、親密の度を加えていた。――というてべつだん、胸襟をひらくとか、肝胆相照らすとか、ことばや形の上で、手を握ったわけでも何でもなく、不和な仲に、彼を知り、此方を知って、自然、男と男との交際が始まって来たのであった。
わけて、きょうの犬千代の訪れなどは、真実、藤吉郎の沙汰を、心配して来たものらしく、その様子は、飾らない態度にも、ぞんざいな言葉のうちにも、汲み取れた。
「――そこがとは?」
「山淵右近の気もちになって、きょうのことを、おぬし、考えてみたか」
「さだめし、無念がって、この藤吉郎を、恨んでおることと、察しておる」
「――では、その山淵右近の、日常の行いや、また侍としての、彼の心事をも、観ておらるるか」
「おるつもりだが」
「そうか……」
犬千代は、ことばを切って、
「おぬしが、そこさえ、看破しておれば、わしも安心だが」
「…………」
じっと、藤吉郎は、彼のつぶやく顔を見ていた。
そして、何か頷いた。
「さすがは犬千代。