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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
叱られて、日吉は、
「へい。もうよけいなことは云いません」
素直に口をつぐんだ。
弓直しの仁田彦十は、
「……誰も来やしまいな」
拝殿の横から、境内を眺めまわして、さて、唇を舐めた。
「おれたち蜂須賀党の者と、斎藤道三秀龍様との深い関係は、汝もいつか、聞いているだろうが」
「…………」
日吉は、前に懲りているので、返辞もただ頷いてするに止めておく。
「ところが、その道三秀龍様と、養子の新九郎義龍とは、ここ数年、互いに不和になっている。なぜといえばだな――」
彦十は、日吉に分る程度に、斎藤一門の内訌と、美濃の紛乱している実状とを、ざっと、次のように掻いつまんで語った。
道三秀龍は、前名を長井利政ともいい、西村勘九郎といった頃もあり、松波荘九郎と名乗ったこともあるし――また、名もない油売りであったり、武者修行に歩いたり、寺にいたこともあるという――何しろ経歴の混入っている人物で、その強か者ということは、彼が美濃一国に蟠踞してから、まだ、一尺の地も、外敵に譲らないのを見てもわかる。
だが、肚は黒い。
何しろ油売りから身を起して、空手で美濃一国をわが物とした男だけに、最初に仕えた主人土岐政頼を殺し、次の主人頼芸をまた、国外へ追って、その妾を奪ったりなど――残忍酷薄な数々の経歴は、挙げて語ったら限りもない。