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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
日吉は、勿論、道をよけて、並木の下にぼんやり土下座していた。――と、嘉兵衛が馬上から振りかえったので、日吉も顔を上げて、じっと見送っていた。
「ア、――待て」
嘉兵衛は、急に駒を締めて、うしろ向きに、郎党たちへ、
「今の針売り、これへ召し連れて来い。……異相だ! 何とも異相な男ではある!」
と、半ば、独り語のような嘆声でいった。
郎党の能八は、主人の物好きな――とは思ったが、すぐ駈け戻って行き、
「こら。針売り」
「へい」
「御主人がお召しだ。ちょっと、御馬前まで来い」
と、引ッ張って来て、嘉兵衛の前にひきすえた。
嘉兵衛は、じっと鞍の上から日吉を見ていたが、それは顔が猿に似ているなどという興味ではなかった。
そんなことは念頭になく、
(……異相だ!)
と、再びしげしげ見入ったのであった。
しかし、嘉兵衛が、日吉を一瞥して、直感したものは、それだけの嘆声では、まだ尽きていない。もっと複雑で無形な、霊感的なものが、彼を引き止めたのだった。
垢じみた木綿布子につつまれた小男の――一体どこに、そんな魅力があったかといえば、黙って、大地から嘉兵衛を見上げている日吉の眼だった。