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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

それは、随身の侍の、一人の姿にも、いわゆる羽振りとなって、光っていた。松下嘉兵衛などは、義元直参の旗下とはちがい、地侍の被官だったが、それでも、日吉の知っている清洲や、那古屋や、岡崎あたりの邸とは、比較にならぬ程、どこか豊かだし、客足も多く、奉公人たちは皆、わが世の春を顔に見せていた。

「猿――」

と、若党の能八郎が、中庭に立って、探していた。

「はい」

「おや?」

能八郎は、屋根を見上げ、

「何をしているか。そんな所へ上がって」

「屋根を繕っております」

「屋根を?」

と、呆れ顔に、

「こんな暑い日盛りに、ご苦労なやつだ。何で屋根屋のまねなどしておるのか」

「土用照りがつづきました。こんどは大雨です。雨が来てから屋根屋を呼んでも間にあいませんから、板のハゼている所だけ見つけて繕っています」

「だから貴様は、朋輩に憎まれるのだ。日盛りの一刻は、皆、木蔭やそこらで、昼寝しているのに」

「眼につく所で働いていると、皆様の昼寝を邪魔しますから、屋根ならよいと思って」

「嘘をいえ。実は、貴様あ、そこで、お邸の地形を見ているのだろう」

「さすがは能八様、よくお気がつきました。それをのみ込んでいないことには、いざという時、護るに即座の手配りがつきません」