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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

と、すぐ穂先をかえた。

「馬か」

「さればで」

「爺、そちも乗れ。一鞭あてよう」

騎馬で駈けまわることは、信長の大好きなひとつだった。それも城内の馬場では心にみたず、城下から三里も四里もある所を、よく一気に駈け、一気にもどって来たりした。

(――寔に人を人臭しとも思われぬ和子君で在すでなあ)

とは、信長の幼少から守役の平手中務が、何か持て余すたびに傍人へもらして来た嘆息だった。

十三歳で元服し、吉法師の字を三郎と改め、十四歳初陣して、十六で父信秀にわかれた上総介信長の、人を人臭いとせぬ面だましいは、長ずるにつれて、いよいよ、傍若無人になるばかりだった。

父の葬儀の日、その式場においてさえ、こんなことがあった。

――御焼香。

となった折、

席から立った信長の姿を人々が見ると、長柄の太刀脇差に、七五三縄を巻いていた。袴もはいていないのである。

「あれよ、また、狂態な跡とり殿が、何の不作法」

と、あきれていると、信長はずかずか、仏前へすすんで、立居のまま、抹香をつかんで、御仏へばらっと投げ懸けて、驚く人々をしり目にさっさと帰ってしまった。

「ても、呆れたうつけ殿」