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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

舅君の道三様と御会見の場所、正徳寺もすぐそこでござりますれば、何かにつけお行儀ようなされませ」

「ははあ、そうか。ここがもう富田か。――本願寺の坊官どもが領分とやら、穏やかだのう。ここには戦争がないな」

そんな言葉が聞えた。

黙ると、信長は、欅の並木を仰向いて、青空をよぎった鷹の影でも見送ったのか――ゆらゆらと鳴る腰の太刀や、七つ道具を響かせて、すぐ通り過ぎてしまった。

表戸を閉てて、隙見していた道三の側衆たちは、思わず、

「ぷッ……」

「うふ、ふ、ふ」

口を抑えて、おかしさを怺えるのに、苦しがっていた。

「皆よ」

道三は、呼び立てて、

「もはや行列は皆、過ぎたか」

「終りました」

「見たか。聟どのを」

「よそながら」

「どう見ても、世評を裏切らぬうつけ者、容貌はよし、骨柄も一通りじゃが、すこし足らぬ。……ここが」

と、道三は、自分の頭を、指でついて、満足そうに苦笑した。

と、裏口で、

「大殿、お早く」

と、ほかの家来たちが、急きたてて云った。

道三はすぐ起って、

「おおさ、気どられては、信長はともあれ、眼はしの鋭い他の家来に気まずいものになる。先を越えて、正徳寺へ参っておらねばなるまい」