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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
そちたちも、儂に仕えるものなれば、ふた心など持つな。武門に生きる効もあるまい。――武士は一道か、牢人かじゃ」
佐渡は、眼が醒めた。
信長の真のすがたを、今初めて仰いで、その天質をやっと知ったのだった。
ただ、恐ろしい心地に打たれた。身の程も恐ろしかった。かたく、忠勤を誓って、顔も上げ得ずに退った。
――が、骨肉には、かえって、分らなかったとみえる。弟の勘十郎信行は、信長の寛大を、むしろ見縊って、
「母がいるので、乱暴な兄も、わしをどうすることもできぬのだ」
と思った。
母公の愛と、盲目にかくれて、信行はその後も、陰謀をやめなかった。
信長は、嘆じた。
「信行の悪戯は、悪戯として、放っておいてもよいが、そのため、幾多の家士が、逆徒となって、武門の身を過る。骨肉なれど、家のため、家臣のため、眼をつぶらねばなるまい」
機を見て、信長は遂に、信行を捕えてこれを刺してしまった。
もう信長を、暗愚と見る家臣はなかった。
いや、むしろ近頃では、彼の明敏と鋭利なひとみに慴伏しすぎて、信長自身、
「ちと、くすりが利きすぎた」
と、時には、苦笑を覚えるくらいなものだった。