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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

「ウ、ウウム。……ウウム」

日吉は、よく魘された。

眠りの中に、闇夜の跫音が聞えるのか、天下の動乱が、彼の夢を、怯えさせて熄まないのか。

或る夜などは、側に寝ていたおつみを蹴とばし、おつみがびっくりして、泣きだすと、

「八幡っ、八幡っ、八幡っ」

と呶鳴って、いきなり寝床から跳ね上がり、眼ざめて、宥めても、まだ寝呆けて、何か昂ぶり続けるようなことがままあった。

「疳の虫だ。この項に、疳の灸をすえてやれ」

と、弥右衛門はいう。

だが、日吉の母は、

「疳の灸は、いくらすえたか知れませぬ。あんな子に、あなたが、刀を見せたり、御先祖のはなしなど聞かせるから、いけないんですよ」

と、いった。

×      ×      ×

そのうちに、この一軒にも、大きな変りが見舞った。

翌年――天文十二年一月二日に、弥右衛門が病死したのである。

人間の死。

というものを、日吉は初めて、父の死顔に見たが、涙はこぼれなかった。葬式の中でも、飛んだり跳ねたり、遊んでいた。

その一周忌も過ぎて、翌年の九月頃。

日吉が九歳の秋だった。

この一軒にまた、人がたくさん集まった。餅をついたり、酒をのんだり、めでたいめでたいと歌ったりして夜を更した。