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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁
秀之進からみれば、宗兵衛はもう「生みの父」ではなかった。倶に起って闘うべき同志のひとりだった。かれが泊ることを拒んだのは、その感じの壊れることを惧れたのである。改めて父子の感動が生れることが耐えられなかったからだった。
――そうだ、今はもう父も子もない、みんなが倶に闘うべき兵だ。それ以外の感動は寄り道にすぎない。
秀之進はそう思い、ひきとめたげな宗兵衛のようすをふり払って校川家を辞した。……すると小石川御門を出て三町あまり来たとき、うしろから「秀之進」と呼びながら追いついて来た者があった。立ち停った秀之進の前へ、大股にはせつけて来たのは宗兵衛だった。
「云い忘れた、水戸家の久木直二郎という人がおまえをたずねている、なにがあったかおれは知らぬが、覚えがあるか」
「……ございます」
「捜しているようだ、久木氏はなかなか剛気の仁だ、注意しろ」
「有難うございます」
ではと云って、宗兵衛はじっと秀之進の顔をみつめ、すぐに踵を返して去っていった。
三当旗
一
うだるような暑い午後だった。
皀莢小路の大助の別宅から、暑さを截ち切るかのように蕭索と横笛の音が聞えていた。吹いているのは藤尾である。