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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁

青空文庫

「どうかなさいまして……」

梅八の微かな呻きごえを聞いて、藤尾がそっとこちらを見た。

梅八は身動きもせず、軽い寐息が聞えるばかりだった。藤尾は安心したように枕をし直し、間もなくしんと眠りいってしまった。……こちらはもちろん眠っているのではなかった。思わず呻かずにいられないほど、回想の切なさに苦しめられていたのだ。

――若旦那へお詫びだけはしなくてはならない、寒笑も伴れてゆこう、あの男も私も、若旦那にはお返しのできないほど御恩を受けている、それが二人とも、恩を仇で返すような事をしてしまった、たとえ恩返しはできなくとも、せめてお詫びぐらいしなければ人間じゃあない、……江戸っ子らしく、さっぱりと、……そしてこんどはもう少しましな者に生れてきて、この世で借りたものを返さなければならない。

梅八の頬にひとすじ涙が滴った。どこの軒に吊った籠で鳴くのか、すいっちょが澄んだ声を張って鳴き続けていた。

高原の風

一

甲府盆地から八岳の裾へと、めぐりめぐり登って来た道は、小淵沢のあたりですっかり高原の爽涼な風景のなかへはいる。盆地のうだるような暑さに比べると気温もかなり低い。