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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
と笑ったりした。その春子も成人して、ぐっと逞しくなってしまっていた時、「虫」の作曲の顔寄せがあったのだった。
金屏の前に、紫檀の台に古銅の筒の花器、早い夏菊の白が、みずみずしく青い葉に水をあげていた。深い軒に、若葉がさして、枝の間から空は澄んで見えた時節だった。好い毛氈の上に幾面かの箏が出されてある。猿之助は、黒の紋附きの羽織に袴をつけて、
「荻原さん、聴入れて頂きまして、ありがとうございます。」
と、手をついていった。浜子も丁寧におじぎをかえした。
であるから、いかなる異変があっても、この約束は破れないと、私は信じた。が、遅れてはいって来た春子は、いかにも腹が立つように、苛々そこらを歩いて、唾を吐いたりした。猿之助は帰ったあとで、尺八の方の人が残っていたが、それも帰ると、浜子の芸術を冒涜するということを、彼女は雄弁に泣いて諭めた。
これは、春子を通して、浜子の周囲一同の代弁であったのかもしれなかった。後から来た浜子の手紙でも知れた。私は、それを、無理とは思わないが、世間見ずな思い上りだと思った。若い猿之助の悲憤を思いやった。慰めようもない思いでわびた。