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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

それらはみんな、大正十二年の震火災であともなくなってしまった。

「外国の保険だの、外国の銀行にあったものだのが、かえって、こっちでは、わからなくなってしまっても、ポツポツ先方から知らせてくれて。」

と、彼女は言った。身をもって逃れて、路で草履を拾って母にはかしたといったほど、何もかも失ってしまったが、秩序が回復すると、私たちにくらべれば、やっぱり閑かに暮してゆける人だった。

「お店がああなって、横浜にいなくって好いのだから、東京へ来るのに、家を売ろうかと思っているうちに――」

邸は震火に失ってしまったのだ。彼女はあんまり用心深かったことがいけなかったといった。一ツひとつ、思出の深い箏も、みんな焼いてしまったが、思いがけない悦びは、芝の寺島(菊五郎家)氏から、衣類をもって見舞いにいった者が、家でも角の土蔵は焼けたが、母屋や、奥蔵が残ってといって、お預りしてある箏も無事ですといった。

「おお、『若草』が――」

彼女は、すぐにも、『若草』という箏の絃に触れて見たい衝動を、おさえられなかったほどだった。

数日の後、荻原一家は、神奈川台の島津春子刀自の家にいた。この人も長い間の、年長の友達であった。