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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

錦子は半狂乱のようになった。そんな時期だったのだろう。錦子は墨田川へ身を投げようとした。――墨田川! それは、ふうちゃんが水をみつめていた、あの橋の上流だ。

結婚してたった四月、お金を無心にやられたのだともいうし、離縁されて帰されたのだともいい、体の悪いのを案じて出京した母親が、連れもどったのだともいわれているが、そのうちのどれにしても帰りにくかった古里へ、錦子は帰らなければならなかったのだが、故郷にも待っている冷たい眼は、傷心の人を撫てはくれない。

憂鬱の半年、身をひきむしってしまいたいような日々を、人形を抱いて見たり投りだしたり、小説を書けば、「五大堂」のように、没身心中を思ったりして、錦子はだんだんに労れていった。

事あれかしの世間は、我儘娘の末路、自由結婚、恋愛三昧の破綻を呵責なく責めて、美妙に捨られた稲舟は、美妙を呪って小説「悪魔」を書いていると毒舌を弄した。

錦子は、そうまでされても美妙をかばった。そんなものは書いていないということを、紅葉の文芸欄といってもよい、『読売新聞』によって、「月にうたう懺悔の一節」を発表してもらったが、自分が悪かったということばかりいっている、しどろもどろの長歌みたいなものだった。