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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

十月廿一日※(「火+華」、第3水準1-87-62)子

伊藤伝右衛門様

この手紙が出るまでもなく、前日の家出だけでも、事件はお釜の湯が煮えこぼれるような、大騒ぎになっていた。各新聞社は、隠れ家の捜索に血眼だったが、絶縁状が『朝日新聞』だけへ出ると物議はやかましくなった。しかも、その手紙が、肝心な夫伝右衛門氏の手にはまだ渡っていないのに、新聞の方がさきへ発表したというので騒いだ。黒幕があるというのだ。

おなじ廿三日の、おなじ欄に、伝右衛門氏の九州福岡での談話が載った――

「天才的の妻を理解していた」という見出しで、

互の世界はちがっていても、謙遜しあうのが夫婦の道、だが絶縁状を見たうえは、何とか処置する。

勿論、今朝の(廿二日)新聞で事情の大略は知ったが、しかし、そんな事が実際あるべきものとは思われない。※(「火+華」、第3水準1-87-62)子としても、そんな無分別なことを果してしたものだろうか、本月末には博多に帰って来る約束をしてある。家庭のことを振りかえって見ても、不愉快や、不満に思うふしは毛頭あるはずがないと思います。随分我儘な女です。何不自由なく、世間から天才とか何とかいわれるまで勉強もさせ、小遣だって月五十円はおろか一万円にものぼることすらある。