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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

「あんた、先度お出やはった時に、わてに口かけときなさりながら、島原の太夫さん落籍おさせやしたやないか。いえ、知っとります、横浜へ、あんたさんの後追いかけて、その太夫さんがお出やしたことも。よう知ってますがな。」

と、やかましいことになったのだった。まだ、お雪の話が纏まらないうちに、島原遊廓の、小林楼の雛窓太夫を、モルガンが、内密で、五百円で親元根引きにさせたことを持出して、お雪はその時のことも、本当だろうと気にしたのだ。

一年ぶりで、花の春の、母国へ訪ずれて来たお雪は、知る人も知らぬ人も、着物も、匂いも、言葉も、懐しかったので、忙しなく接していた。恰度日本は、露国との戦争に、連戦連勝の春だったので、草川の家の軒にも、日米の国旗を掲げて、二人は賑かな心持ちでいた。

折もおり、丸山公園の夜桜も盛りであったし、時局の影響で遠慮していた、島原のものいう花の太夫道中も、その年は催おされた。

道中の真っさきには、若手の芸妓が綱をとって花車が曳き出され、そのあとへ、先頭が吉野太夫、殿りが傘止めの下髪姿の花人太夫、芸妓の数が三、四十人、太夫もおなじ位の人数、それに禿やら新造やらついて練り歩くのを、外国人の観覧席は特別に設けたという後だったので、お雪は雛窓のことを思い出して、カッとなったのだった。