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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

雨のなかを通りぬけて来た時からの異状が、その時になって現われたのだが、すぐ後にいた岡田八千代さんがびっくりして、

「はやく、火鉢のある方へ行かなければ。」

と案じてくれた。生田花世さんも、外套をもって来ましょうかといってくれた。

みんなも気がついて、向うへ行っていよとすすめる。焼香もすましているので、あたしは親切な友達たちのいう言葉にしたがった。

外套にくるまって、火鉢に噛りついていると、どんなふうかと案じて来てくれながら、そうではないような様子に、

「おお寒い寒い。」

と、自分も逃げて来たように言って、八千代さんはそこらの障子を閉めてくれて傍へ来た。

「どう? お寺で風邪なんぞひいたらいけないから。」

あたしは大丈夫と言いながら丸くなって、友達の顔も見なかった。見たら、涙が出そうでしかたがない。

みんな、たいした苦労だ――

と、そればかりを噛むように思った。みんな、跣足で火を踏んだような人たちだ。今日の若人たちの眼から見たらば、灰か、炭のように、黒っぽけて見えもするであろうが、みんな火のように燃えていて、みな、それぞれ、その一人々々が、苦闘して、今日の、若き女人たちが達しるというより、その出発点とするところまでの茨の道を切り開き、築きあげて来たのだ。