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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

二尺の袖かと思うほどの長い袖に、淡紅色の袖を重ねた右の袂を膝の上にのせて、左の手で振りをしごきながら、目を先生の方を正しくむいてすこし笑ったりなさいました。

帯は高く結んでお出でしたが、どんな色合であったか覚えておりません。忘れたのか、それともその時は、ずっと襖の側に並んで座っていましたから、其処から見えなかったのかも知れません。召物は白い上布であらい絣がありました。

その方がその当時、一葉女史を退けては花圃女史と並び、薄氷女史より名高く認められていた、楠緒女史とは思いもよりませんでした。自分たちと同じほどの年頃のお方かと思っていましたが、女史は二十一か二の頃でありましたろう。お連合の博士は海外へ留学なさってお出のころでした。

四年ばかりたちました。春三月に竹柏会の大会が、はじめて日本橋倶楽部で催されたおりにはっきりと楠緒女史はあの方だと思ってお目にかかりました。もうその頃はずっと地味づくりになって、意気なおつくりで黒ちりめんの五ツ紋のお羽織を着てお出でした。女のお子のおありのこともその時に知りました。

その後も何かの会のおり、写真を写すおり、御一緒になって一言二言おはなししたこともありましたが、私の思出は何時も一番お若いときの、袖を撫ておはなしをなさっていた面影が先立ちます。