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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁
そんならどうしてお許しを得るかというと、このたび殉死した人々の中の内藤長十郎元続が願った手段などがよい例である。長十郎は平生忠利の机廻りの用を勤めて、格別のご懇意をこうむったもので、病床を離れずに介抱をしていた。もはや本復は覚束ないと、忠利が悟ったとき、長十郎に「末期が近うなったら、あの不二と書いてある大文字の懸物を枕もとにかけてくれ」と言いつけておいた。三月十七日に容態が次第に重くなって、忠利が「あの懸物をかけえ」と言った。長十郎はそれをかけた。忠利はそれを一目見て、しばらく瞑目していた。それから忠利が「足がだるい」と言った。長十郎は掻巻の裾をしずかにまくって、忠利の足をさすりながら、忠利の顔をじっと見ると、忠利もじっと見返した。
「長十郎お願いがござりまする」
「なんじゃ」
「ご病気はいかにもご重体のようにはお見受け申しまするが、神仏の加護良薬の功験で、一日も早うご全快遊ばすようにと、祈願いたしておりまする。それでも万一と申すことがござりまする。もしものことがござりましたら、どうぞ長十郎奴にお供を仰せつけられますように」
こう言いながら長十郎は忠利の足をそっと持ち上げて、自分の額に押し当てて戴いた。