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にほんのび
日本の美
中井 正一
線上閱讀中井 正一《日本の美(にほんのび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 96,126 字 · 187 頁
かかる芸術家の現実にこそ、初めて、技術のきわみから、技術を超えて帰ってくる幽玄の世界が現われるのであります。彼はいいます。
「上手の、極め到りて、闌けたる心位にて、時々異風を見する事のあるを、初心の人これを学ぶことあり、この闌けてなすところの達風、さうなく学ぶべからず」
この世阿弥の「闌ける」という言葉「闌けかへる」という言葉は、さきの「峠を越える」という言葉と同じく重大なものであります。日本の中世の芸術が初めて到達した文化遺産というべきでありましょう。つまり、天才が、訓練をきわめた後に、ある意味において、安らかに、ある意味で、そのフォームを崩すまでにいたることがあるのであります。この、ちょっと変わった自由な芸術を、練習中の人が、うっかり、これをまねしたら、とんでもない誤りをなすことを、世阿弥は忠告しているのであります。近代の芸術にも、よくディフォルメイション、形を崩すということがありますが、これを練習中のものがすると、大変なことになることを、われわれは深く知るべきでありましょう。日本の中世の芸術は、はやくもこの危ない瀬戸際、芸術の心髄にのみある美しい危険な機微な箇所にまで、あえて身を挺して、到達したといえるでありましょう。