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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁

青空文庫

尤も、あいつは馬鹿であるなぞとファルスは決して言いはしないが。又、例えば、ファルスの人物は、往々、「拙者は悲惨だ、拙者の運命は実に残酷である――」と大いに悲歎に暮れている。ところがファルスの作者達は、そういう歎きに一向お構いなく、此等の悲しきピエロとかスガナレルという連中を、ヤッツケ放題にヤッツケて散々な目に会わすのである。ファルスの作者というものは、決して誰にも(無論自分自身にも――)同情なんかしようとはしないものだ。頑として、木像の如く、木杭の如く、電信柱の如く断じて心臓を展くことを拒むものである。そして、この凡有ゆる物への冷酷な無関心に由って、結局凡有ゆる物を肯定する、という哀れな手段を、ファルス作家は金科玉条として心得ているだけである。

一体ファルスというものは、何国に由らず由来最も哲学的(出来損いの――)なものであるが、西洋では、近世に近づくに従って、次第にファルスは科学的に――と言うのもちと大袈裟であるが、つまりファルス全体の構成が甚しくロジカルになってきた。従而、その文章法なぞも、ひどくロジカルにこねくり廻された言葉のあやに由って、得体の知れない混沌を捏ね出そうとするかのように見受けられる。