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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁

青空文庫

スタンダアルの文体

私はスタンダアルが好きであるが、特に私に興味のあるのは、彼の文体の方である。

凡そ人間の性格を眼中に入れなかった作家といえば、スタンダアルほどその甚しいものはない。人間を性格的に把握しようとすることが彼の作品に皆無である。

然し彼には人を性格的に把握する能力が欠けていたわけではない。欠けているどころか人並以上に眼光が鋭く性格把握の能力が勝れているのは「バイロン論」を読めば分る。バイロン論と言ったって、実はバイロンとの交遊録で、バイロンの性格や人物だけを書いている。

結局彼は、文学の野人であった。彼には伝統も不要であった。彼の文学の興味は非常に筋書的な線的な興味で、性格描写なぞにはてんで情熱がわかなかったのであろう。

従而彼の小説の人物は固定された性格を全く与えられてはいないわけだが、事件から事件へ転々と動かされて行くうちに、いわゆる性格なぞというケチな概念とかけはなれ、実に歴々と特殊な相貌を明らかにする。彼の作中の人物は性格が何物をも限定せず、事件が人間を限定し同時に発展せしめるという無限の可能と動きの中におかれている。従而彼の文章はそれにふさわしく特殊である。