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ファルスについて
日本文化私観 坂口安吾エッセイ選
線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁
扨て、それ故私は、この出鱈目な一文を草するに当っても、敢て世論を向うに廻して、「ファルスといえども芸術である」なぞと肩を張ることを最も謙遜に差し控え、さればとて、「だから悲劇のみ芸術である」なぞと言われるのも聊か心外であるために、先ず、何の躊躇らう所もなく此の厄介な「芸術」の二文字を語彙の中から抹殺して(アア、清々した!)、悲劇も喜劇も道化も、なべて一様に芝居と看做し、之を創る「精神」にのみ観点を置き、あわせて、之を享受せらるるところの、清浄にして白紙の如く、普く寛大な読者の「精神」にのみ呼びかけようとするものである。
次に又、この一文に於て、私は、決して問題を劇のみに限るものではなく、文学全般にわたっての道化に就て語りたいために、(そして、私は言葉の厳密な定義を知らないので、暫く私流に言わして頂くためにも――)、仮りに悲劇、喜劇、道化に各々次のような内容を与えたいと思う。A、悲劇とは大方の真面目な文学、B、喜劇とは寓意や涙の裏打ちによって、その思いありげな裏側によって人を打つところの笑劇、小説、C、道化とは乱痴気騒ぎに終始するところの文学。
と言って、私は、A・Bのジャンルに相当する文学を軽視するというのでは無論ない。