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ファルスについて
日本文化私観 坂口安吾エッセイ選
線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁
彼の小説は一行ずつ動いて行く。それも非常に線的な動き方をするのである。百行のうちに二十人くらいの人物が現れ、なんの肉体もなく線のように入りみだれて動きまわっていると思うと、突然それらの人物が肉体をもち表情をも恰も実の人物を目のあたりに見る明瞭さで紙上に浮きでていることに気付かなければならないのである。
文学にはいつも奇蹟が必要だ。然しスタンダアルのこの奇蹟は奇蹟中の奇蹟であって、スタンダアルの天才にだけ許されたものであった。直接模倣することは無意味である。
私は従来の文学に色々の点で不満を持つが、その最も大なるものは人間や人間関係の把握の仕方の惨めなまで行きづまったマンネリズムに就てである。人間の性格を把握する認識の角度なども阿呆らしく、そういう約束の世界に住みなれてみると結構そういう約束ごとの把握の仕方が通用し、実在界を規定するから益々もって阿呆らしい。
もとよりスタンダアルの描いた人間は新鮮ではない。彼は性格を主目的に描かなかったとはいえ、結局最後に性格が滲みでてくるわけであるが、それらの性格も新鮮でない。別に新鮮な角度から認識されてはいないのである。