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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁

青空文庫

藤田嗣治はオカッパ頭で先ず人目を惹くことによってパリ人士の注目をあつめる方策を用いたというが、その魂胆によって芸術が毒されるものでない限りは、かかる魂胆は軽蔑さるべき理由はない。人間の現身などはタカの知れたものだ。深刻ぶろうと、茶化そうと、芸術家は芸術自体だけが問題ではないか。誰だって、無名よりは有名がよかろう、金のないより、有る方がよい。尤も、有名になり、金を握ってみて、その馬鹿らしさにウンザリしたというなら、それも結構だけれども、自ら落伍者で甘んじる、ただ仕事だけ残せばいいという、その孤独な生活によって仕事自体が純粋高尚であり得るという性質のものではない。

現世的に俗悪であっても、仕事が不純でなく、傑れたものであれば、それでよろしいので、日本の従来の考え方の如く、シカメッ面をして、苦吟して、そうしなければ傑作が生れないような考え方の方がバカげているのだ。清貧に甘んじるとか、困苦欠乏にたえ、オカユをすすって精進するとか、それが傑作を生む条件だったり、作家と作品を神聖にするものだという、浅はかな迷信であり、通俗的な信仰でありすぎる。

こういう日本的迷信に対して反逆し得る文化的地盤は、たしかに大阪の市民性に最も豊富にあるようだ。