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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《日本文化私観 坂口安吾エッセイ選(ファルスについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 頁

青空文庫

我々文士は諸君にお説教をしているのではない。解説をしているのでもない。ただ人間の苦悩を語っているだけだ。思想としてでなしに、物語として、節面白く、読者の理智のみではなく、情意も感傷も、読者の人間たる容積の機能に訴える形式と技術とによって。文士は常に、人間探求の思想家たる面と、物語の技術によって訴える戯作者の面と、二つのものが並立して存するもの、二つの調和がおのずから行われ、常に二つの不可分の活動により思想を戯作の形に於て正しく表現しうることしか知らないところの、つまりは根柢的な戯作者たることを必要とする。なぜなら、如何に生くべきかということは、万人の当然なる態度であるにすぎないから。

然し単なる読み物の面白さのみでは文学では有り得ないのも当然だ。人性に対する省察の深さ、思想の深さ、それは文学の決定的な本質であるが、それと戯作者たることと、牴触すべき性質のものではないという文学の真実の相を直視しなければならぬ。我々の周囲には思想のない読物が多すぎる。読物は文学ではない。ところが、日本では、読物が文学として通用しているのだから、私が戯作者というのを、単なる読物作家と混同したり、時にはそれよりももっと俗な魂を指しているのかと疑られたりするような始末である。