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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(一)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁

青空文庫

飛んだ人に飛んだことを相談したと、十右衛門はいよいよ後悔しているらしく見えた。

「旦那。どうぞ裏口からこっそり入れてください」と、半七は云った。

しかし、まさかに裏口へも廻されまいと十右衛門は少し躊躇していると、半七は店の横手の路地へはいって、ずんずん裏口の方へまわって行った。その足取りはあまり酔っているらしくも見えなかった。十右衛門は追うように其の後について行った。

「すぐにお冬どんに逢わしてください」

裏口からはいった半七は、広い台所を通りぬけて女中部屋を覗いたが、そこには三人の赭ら顔の女中がかたまっていて、お冬らしい女のすがたは見えなかった。

「お冬はどうした」と、十右衛門は障子を細目にあけると、赭ら顔は一度にこっちを振り向いて、お冬はゆうべから気分が悪いというので、おかみさんの指図で離れ座敷の四畳半に寝かしてあると答えた。その四畳半は十九日の晩、角太郎の楽屋にあてた小座敷であった。

縁伝いで奥へ通ると、狭い中庭には大きな南天が紅い玉を房々と実らせていた。ふたりは障子の前に立って、十右衛門が先ず声をかけると、障子は内から開かれた。障子をあけたのはお冬の枕辺に坐っていた若い男で、お冬は鬢も隠れるほどに衾を深くかぶっていた。