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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁
その井戸側について左へ曲がると、また鉤の手に幾軒かの長屋がつづいていた。しかし長屋は右側ばかりで、左側の空地は紺屋の干場にでもなっているらしく、所まだらに生えている低い秋草が雨にぬれて、一匹の野良犬が寒そうな顔をして餌をあさっていた。
「此処ですよ」と、熊蔵は小声で指さした。猫婆の南隣りはまだ空家になっているらしかった。二人は北隣りの大工の家へはいった。熊蔵は大工を識っていた。
「ごめん下さい。悪いお天気です」
外から声をかけると、若い女房のお初が出て来た。熊蔵は框に腰をかけて挨拶した。途中で打ち合わせがしてあるので、熊蔵はこの頃この近所へ引っ越して来た人だと云って半七をお初に紹介した。そうして、今度引っ越して来た家はだいぶ傷んでいるので、こっちの棟梁に手入れをして貰いたいと云った。その尾について、半七も丁寧に云った。
「何分こっちへ越してまいりましたばかりで、御近所の大工さんにだれもお馴染みがないもんですから、熊さんに頼んでこちらへお願いに出ましたので……」
「左様でございましたか。お役には立ちますまいが、この後ともに何分よろしくお願い申します」
得意場が一軒ふえることと思って、お初は笑顔をつくって如才なく挨拶した。