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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁

青空文庫

大門を出ると、路はだんだんに暗くなった。駕籠屋や煮売り酒屋の灯の影がまばらにつづいて、埋立て地を出はずれる頃からは更に暗い田圃路になった。そこらでは早い蛙が一面に鳴いていた。

先に立ってゆく三人はしきりに小声で話していたが、やがてその声が高くなって、ロイドは片言で云った。

「日本の人、嘘云うあります、わたくし堪忍しません」

「なにが嘘だ。さっきからあれほど云って聞かせるのが判らねえのか」

「判りません、判りません。あなたの云うことみな嘘です」と、ロイドは激昂したように云った。

「あの品、わたくし大切です。すぐ返してください」

「返せと云っても、ここに持っていねえのは判り切っているじゃあねえか」

こういう押し問答が繰り返された後に、勝蔵はロイドを突きのけて行こうとするのを、かれは追いかけて引き戻した。ひとりの異人と二人の日本人とは狭い田圃路で格闘をはじめた。それをみて、半七は子分らに声をかけた。

「異人は打っちゃって置いて、勝蔵ともう一人の奴を取っ捉まえろ」

三五郎と松吉はすぐに駈け出して行って、有無を云わせずに二人の日本人を取り押えた。ロイドはおどろいて一目散に逃げ去った。