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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
木偶に魂があっても無うてもかまわん。※(歌記号、1-3-28)魂かえす反魂香、名画の力もあるならば……」
大きな声で唄いながら、彼はあはははははと高く笑い出した。喧嘩の出ばなを挫かれて、二人もだまって苦笑いをした。それで人形問題は立ち消えになったが、席はおのずと白らけて来て、談話も今までのように弾まなかった。紋七が折角の心づくしも仇になって、三人はなんだか気まずいような顔をして別れることになった。
四ツ(午後十時)すこし前に紋作と冠蔵の二人はここを出た。ふたりともに可なりに酔っていた。紋七はあとに残って今夜の勘定をして、それから店の帳場へ寄って、稼業柄だけに愛嬌ばなしを二つ三つして、おかみさんや女中たちを笑わせているところへ、頬かむりをした一人の男が店口へついとはいって来た。
「紋作はこっちに来ていますかえ」
「たった今お帰りになりましたよ」と、女中のひとりが答えた。
それを十分聞かないで、男は消えるように出て行った。それから又すこししゃべって、店では提灯を貸してやろうと云うのを断わって、紋七もほろよい機嫌でここを出ると、上野の山に圧し懸かっている暗い空には星一つみえなかった。