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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
文政四年五月十日の朝、五ツ(午前八時)を少し過ぎた頃に、奥州街道の栗橋の関所を無事に通り過ぎた七、八人の旅人がぞろぞろ繋がって、房川の渡(利根川)にさしかかった。そのなかには一人の若い旅絵師がまじっていた。渡し船は幾艘もあるので、このひと群れは皆おなじ船に乗り込んで、河原と水とをあわせて三百間という大河のまん中まで漕ぎ出したときに、向うから渡ってくる船とすれ違った。広い河ではあるが、船の行き馴れている路はいつも決まっているので、両方の船は小舷が摺れ合うほどに近寄って通る。船頭は馴れているので平気で棹を突っ張ると、今日はふだんより流れのぐあいが悪かったとみえて、急に傾いてゆれた船はたがいにすれ違う調子をはずして、向うから来た船の舳先がこっちの船の横舷へどんと突きあたった。
つき当てられた船はひどく揺れて傾いたので、乗っていた二、三人はあわてて起ちかかった。船頭があぶないと注意する間もなしに、一人の若い娘はからだの中心を失って、河のなかへうしろ向きに転げ落ちてしまった。どの人も顔色を変えてあっと叫ぶ間に、船頭は棹をすてて飛び込んだ。かの旅絵師もつづいて飛び込んだ。