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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
はまぐりや浅蜊の獲物も大抵捨てて帰った。命に別状のなかったのをせめてもの仕合わせにして、きょうの潮干狩の群れはさんざんの体でみな引き揚げた。
二
めいめいの宿許へ引き揚げて、やれよかったと初めて落ちつくと共に、どの人の口に上ったのもかの奇怪な人間の噂であった。その風体や挙動が奇怪であるのは云うまでもない、更に奇怪を感ぜしめたのは、彼が誰よりも先に颶風や潮を予報したことであった。老練の船頭すらもまだそれを発見し得ない間に、かれがどうして逸早くそれを予覚したのであろうか。はじめは気ちがいの囈言ぐらいに聞きながしていた彼の警告が一々図星にあたっていたのである。人か神か、仙人か、諸人はその判断に迷った。
混乱の折柄で、彼がそれからどうしたか、どこへ行ってしまったか、誰もたしかに見とどけた者はなかったが、最後にここを引き揚げたのは、築地河岸の船宿山石の船で、その船頭は清次という若い者であった。乗合いは男五人と女ひとりで、船には酒肴をたくさん積み込んで、潮干狩は名ばかりで、大抵は船のなかで飲み暮らしていたが、午すぎになってから、船を出て、人真似に浅蜊などを少しばかり拾いはじめると、かの颶風に出逢って狼狽して、五人のうち二人は早々に船へ逃げ込んで来たが、ほかの三人と女とが戻って来ないので、ふたりは心配して又