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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
更に進んで、小梅のおとわの家へもその怪しい姿を見せるようになった。時によると、どうしても帰らないので、おとわはよんどころなく物置のなかに泊めてやることもあった。かれは品川に泊まって、今まで小半年の月日を送っていたが、それが人の眼に立たなかったのは、いつでも隅田川から大川へ出て、更に沖へ出て、水のうえを往来していた為であろう。かれは魚とおなじように、どんなに冷たい水でも平気で泳いだ。ただ、水中で鮫なぞに襲われる危険を防ぐ為だと云って、常に匕首をふところに忍ばせていた。
ことしの三月四日、喜兵衛が同類四人とおとわを連れて品川の潮干狩に出てゆくと、かの怪しい男がそこらを徘徊しているのを見た。悪い奴が来ていると思いながら、わざと素知らぬ顔をしていると、午すぎになって彼は「颶風が来る、潮が来る」と叫んであるいた。そうして、その警告の通りに恐ろしい颶風が吹き出して、潮干狩の人々を騒がしたので、喜兵衛はいよいよ驚かされた。その以来、かれらは仕事に出るたびに、かならずこの怪しい男を一緒に乗せてゆくことにした。彼を乗せてゆくと、いつも案外のいい仕事があるので、かれらの迷信はますます高まった。