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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
これからお話をいたすのは、四谷塩町の大津屋という絵馬屋の一件で、これも相当に古い店だということでした」
安政元年の春はとかくに不順の陽気で、正月が例外に暖かであったと思うと、三月には雷鳴がしばしば続いた。取り分けて三月二十六日の夜は大雷、その翌日の昼もまた大雷雨で、江戸市中の所々に落雷した。
「これじゃあ何処へも出られねえ」
きょう一日を降り籠められて、半七も唯ぼんやりと夕飯を食ってしまうと、暮れ六ツ半(午後七時)頃には雷雨も晴れて、月のない空に無数の星の光りがきらめき出した。これから何処へ出るというあてもないので、今夜は早寝かなどと云っていると、表の格子をあける音がきこえて、子分の亀吉が茶の間へ顔を出した。
「今晩は……」
「ひどく鳴ったな……」
「時候はずれでちっと嚇かされました」
「表からはいって来て、誰か連れでもあるのか」と、半七は訊いた。
「実はよんどころない人に頼まれて案内して来たんですが、親分、逢ってくれますかえ」
「ここまで連れ込んでしまった以上は、逢うも逢わねえも云っちゃあいられねえ。まあ、通してみろ」
亀吉に案内されて遠慮勝ちにはいって来たのは、四谷の大木戸ぎわの油屋で、これも旧家として知られている丸多という店の番頭である。