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ほんじょりょうごく

本所両国

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《本所両国(ほんじょりょうごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,005 字 · 43 頁

青空文庫

大川端

大川端

本所会館は震災前の安田家の跡に建ったのであろう。安田家は確か花崗石を使ったルネサンス式の建築だった。僕は椎の木などの茂った中にこの建築の立っていたのに明治時代そのものを感じている。が、セセッション式の本所会館は「牛乳デー」とかいうもののために植込みのある玄関の前に大きいポスターを掲げたり、宣伝用の自動車を並べたりしていた。僕の水泳を習いに行った「日本遊泳協会」は丁度、この河岸にあったものである。僕はいつか何かの本に三代将軍家光は水泳を習いに日本橋へ出かけたということを発見し、滑稽に近い今昔の感を催さない訳には行かなかった。しかし僕等の大川へ水泳を習いに行ったということも後世には不可解に感じられるであろう。現に今でもO君などは「この川でも泳いだりしたものですかね」と少なからず驚嘆していた。

僕は又この河岸にも昔に変らないものを発見した。それは――生憎何の木かはちょっと僕には見当もつかない。が、兎に角新芽を吹いた昔の並木の一本である。僕の覚えている柳の木は一本も今では残っていない。けれどもこの木だけは何かの拍子に火事にも焼かれずに立っているのであろう。