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まつかぜのもん
松風の門
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《松風の門(まつかぜのもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,862 字 · 26 頁
六
彼等は竹槍を捨てた。山刀を捨て、猟銃を捨てた。八郎兵衛はそれを見届けてから、振返って治右衛門に、無事に済んだという合図をした。もう蜥蜴の事は頭から消えていた。
六
御前へ出た八郎兵衛は、宗利の表情がかつて見たことのない、烈しい忿りに顫えているのを認めた、彼は悄然と頭を垂れた。
「一揆の者を斬ったというのは事実か」
「はい、粗忽を仕りました」
「誰が斬れと命じた、八郎兵衛、紛らわしい返答はならんぞ」
「私一存にて仕りました」脇息を掴んでいた宗利の手は、忿のために見えるほど顫えていた、八郎兵衛は床板に平伏したまま、「舅治右衛門に些さか助力を致そうと心得、出向きましたところ、一揆の有様を目のあたり見まして、事の恐しさに前後を忘れ、思わず三名を斬ったのでございます」
「斬ってよいものなら、其方などの手を俟つまでもなく斬っておる、事を穏便に納めようと思えばこそ、余をはじめ老職共もこれまで苦心していたのだ、それを知りもせず、短慮に事を誤るとは不届きなやつだ」
「恐入り奉る、平に、平に」
八郎兵衛の額は床板に喰込むかと思われた。その声はただ慈悲を願う響きしかもっていなかった。