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まつかぜのもん

松風の門

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《松風の門(まつかぜのもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,862 字 · 26 頁

青空文庫

七

「明日にでも使をやって」と宗利は其処の草地を見やりながら云った、「閉門を赦してやるとしようか」

「恐れながら八郎兵衛には御無用でござります」

「赦しては悪いか」

「彼は切腹をして相果てました」

七

宗利はなにか聞き違いでもしたように大学の方へ振返った、一羽の尾長が、二人の上を低く叫びながら飛び去った。

「八郎兵衛はあの日、屋敷へ立戻ると間もなく切腹を仕りました、まことにあっぱれな最期でござりました」

「なんで……なんで、八郎兵衛が」

「おわかりあそばしませぬか」宗利は自分の顔が蒼白めてゆくのを感じた。大学は一語ずつ区切りながら、感動を抑えつけたこわねで云った、「もし仮に、このたびの騒動がこういう結果にならず、裁判にかけて何人かを刑殺した場合、農民たちの怨嗟はどこへ向けられましょうか、……恐らく宇和島藩の御政治に長く恨みを遺すことでございましょう、八郎兵衛はそれを、御政治に向うべき遺恨を、即わち自分の一身に引受けたのでござります、彼は穏便にという御意に反いて三人を斬りました、斬ったのは彼の独断でござります。農民たちが遺恨を持つとすれば、相手は八郎兵衛一人、御家には些かも遺恨を含む者はございますまい」