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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
「おやじと兄嫁に連れられてね」
「なぜ知覧に来たのかね?」
五郎は訊ねた。
「兵隊としてか?」
「いえ。兄貴がね、飛行機乗りとして、ここにいた。別れを告げに来たのさ」
丹尾は眼を据えて、窓外の景色を眺めていた。いぶかしげに言った。
「運転手君。これが飛行場か?」
舗装されたかなり広い道が、まっすぐ伸びている。両側は一面の畠で、陽光がうらうらと射し、遠くに豆粒ほどの人々が働いていた。
「ええ。そうです」
運転手は車を徐行させながら答えた。
「この道が昔の滑走路だったそうですよ。私は戦争中のことは知らないが」
「もっともうっと広かった。畠などなかった」
丹尾は両手を拡げた。あまり拡げ過ぎたために、丹尾の右腕は五郎の胸に触れ、圧迫した。それから両手を元におさめた。
「こんな畠なんか、なかった。一面の平地だった!」
丹尾の声は怒っているように聞えた。五郎も漠たる平蕪や並んでいる模型じみた飛行機が想像出来た。それは古ぼけたフィルムのように、色褪せている。しかし丹尾の風貌を、うまくそこにはめ込むことが出来なかった。やがて五郎は言った。
「その時、君はいくつだった?」
「十三、いや、十四だった」