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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

ぎょっとしたね。あの航空機はあぶないんでね」

「あぶないことは知ってたんだろ」

「知ってたよ。墜落するかも知れない。墜落したらしたで、それもいいじゃないか。そう思って乗ったんですが、やはりだめだ。こわかったね。だからぼくはあんたに名刺を渡した」

「名刺をね。どうして?」

「海に墜ちて、死体が流れて判らなくなってしまう。あんたの死体だけでも見付かりゃ、ぼくの名刺を持っているから、ぼくが乗っていたことが判る」

五郎はポケットから丹尾の名刺を出して、裏表を眺めた。

「判ってどうなるんだ?」

「あとで考えてみると、どうもなりゃしない。恐怖で動転してたんだね。あんたはほんとにこわくなかったんですか?」

五郎はしばらく返事をしなかった。チャンポンの具のイカの脚をつまんで食べていた。イカは新鮮で、しこしこしてうまかった。

「こわくはなかった。いや、こわいということは感じなかった。第一、墜ちることを、考えもしなかった。ぼんやりしてたんだな」

「そうですか」

丹尾はまた盃をあおった。

「あんたはなぜ東京から、枕崎くんだりまでやって来たんです」

「そりゃ君と関係ないことだよ」

彼はつっぱねて、チャンポンに箸をつけた。