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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
茶を飲みながら、五郎は主人に弁当を頼んだ。主人は承諾して言った。
「あんたはここで水死した兵隊さんの友達じゃそうですな」
「ええ」
あの女がしゃべったな、と思いながら五郎はうなずいた。主人はそれだけで、あとは追求しなかった。やがてトラックがやって来た。彼は弁当を受取り、主人の贈物のサイダー瓶に入った芋焼酎をかかえ、トラックの荷台に飛び乗る。宿賃は意外に安かった。手を振って、トラックは動き出した。
荷台の上のカンバスをたたんで腰掛け代りにする。しかし道が悪いので車は揺れ、時々ずしんと腰を突き上げて来る。昨夜は熟睡した筈だが、まだ瞼のあたりに疲労が残っている。荷台の若者と運転手は、意味の判らない早口の会話を交わし、笑い合う。五郎は訊ねてみる。
「この車、泊を通るのかね?」
「はい。通ります」
ちゃんとした標準語で答える。こちらの言葉を理解し、きちんと返事が出来るのだ。ふたたび若者同士の会話になると、鴃舌のたぐいに戻る。五郎は疎外感を感じながら思う。
〈おれはあまりしゃべらない方がいいらしいな〉
泊の町に入った時、五郎は背を丸め、何かをねらう眼付きになって、町並や通行人の動きに注意を集中した。