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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

「ぼくはかくれたいんです」

五郎は必死になって言った。その瞬間の気持に、うそいつわりはなかった。吹きさらしの、どこからでも見えるこの場所にいるのが、こわくてこわくて、たまらなかった。女はじろりと五郎を見た。

「そんなにかくれたいのかい?」

五郎はうなずいた。とたんに涙がぽろぽろとこぼれて来た。女の声は少しやさしくなった。

「じゃそこらにかくれな。ああ、ムシムシする」

五郎は手で涙を押えながら、その傍の小屋によろよろと歩んだ。小屋の入口には縄筵がぶら下っている。それを排して内に入ると、六畳ぐらいの板の間があり、あとは土間になっていた。土間というより砂地に近く、礫や貝殻などが散らばっている。五郎は板の間にずり上った。涙はもう乾いていた。

「まだまだ」

と五郎は呟いて、あたりを見廻した。

「油断出来ないぞ」

五郎はごそごそと這い廻り、小屋の構造を調べ始めた。柱はわりに太かった。しかし砂地なので、土台がしっかりしていないらしく、押すとぐらぐら揺れる。柱は何の木か知らないが、長年の潮風にさらされ、材質のやわらかい部分は風化し、木目だけがくっきりと浮き上っている。板の間の一番奥に、簀子がしいてあり、そこに鏡台があった。