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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

停電で電気はつきやせん。ラジオも鳴らんごとなった。まっくらやみの中で、ごうごうと水の流るる音、材木が家にぶつかる音」

今のおれには関係ないな、と思いながら、五郎は老女の話に聞き入っていた。老女の話方には熱がこもっていて、彼の耳をひきつけた。

「そん都度に家が揺れ、梁がみしみし鳴っとですたい。生きた心地はなかったです。丁度こん子が、小学校に入ったか入らん齢で――」

「旦那さんは?」

「はあ。つれ合いは夕方頃からパチンコに行っとりまして、パチンパチン弾いとる中に泥水がどかっと流れ込んで――」

「パチンコ屋にも?」

「そぎゃんですたい。あわてちパチンコ屋ん二階に避難して、そん夜から翌日にかけち、景品の缶詰ばっかり食べ、咽喉をからからにして帰って来ました。そんあと水ば五合ばっかり一息に飲みましたと」

「泥水を?」

「泥水が飲めるもんですか。こやし臭うして。水道ですたい」

「水道は菊池の方から来るとです」

少女が口を入れた。

「泥水がひいち、水道ん栓ばひねったら、きれか水がジャーッと出て来ち、あたしゃあぎゃんなうまか水ば、飲んだことはありまっせんと」

「どうしてそんな大洪水がおこったんだろう?」