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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
瞼がしきりと痒かった。坊津での傷は、ほとんどなおっていて、その跡がしわになっているらしかった。そこをこする私の指の爪が、眼鏡の縁にふれて、かたかたと鳴った。私は侘びしくその音を聞いていた。
午前の当直を終え、正午、私は居住区に戻って来た。当直の時、当直士官の掌暗号長から叱られた。電報が一通、届け方が遅れた。それも傍受電報である。此の部隊に、直接関係があるわけではない。当直士官が幕僚室に、「カブを上げ」たかったからに過ぎない。私は憂欝な気持で昼食を終え、寝台に入り、昼寝をした。そして夢を見た。
何の夢だったかは判らない。ただ、薄暗がりのようなところを、何か一所懸命にわめきながら歩いていた。涙をだらだら流しながら滅茶苦茶に歩いていた。手を振り、足を踏みならしながら、何かさけんでいた。そのまま、ゆるゆると浮き上って来るようにして目が覚めた。汗をびっしょりかいていた。身体中が重苦しくて、夢の感覚がまだ身体のそこここに残っていた。うつつの私も、夢の中と同じように涙を流していた。何物に対してか、つかみかかりたいような気持で、べとつく肌の気味悪さに堪えながら、じっとあおむけに横たわっていた。