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しょくぶついちにちいちだい

植物一日一題

牧野 富太郎

線上閱讀牧野 富太郎《植物一日一題(しょくぶついちにちいちだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,011 字 · 312 頁

青空文庫

イチョウの精虫

夢想だもしなかったイチョウ、すなわち公孫樹、鴨脚、白果樹、銀杏である Ginkgo biloba L. に精子すなわち成虫(Spermatozoid)があるとの日本人の日本での発見は青天の霹靂で、天下の学者をしてアット驚倒せしめた学界の一大珍事であった。従来平凡に松柏科中に伍していたイチョウがたちまち一躍してそこに独立のイチョウ科が出来るやら、イチョウ門が出来るやら、イヤハヤ大いに世界を騒がせたもんだ。そしてその精虫を初めて発見した人は、東京大学理科大学植物学教室に勤めていた、一画工の平瀬作五郎氏(その肖像が昭和三年九月発行の『植物研究雑誌』第四巻第六号に出ている。同氏の顔を知りたい方はそれを看るべしだ)であって、その発見はじつに明治二十九年(1896)の九月であった。

こんな重大な世界的の発見をしたのだから、普通なら無論平瀬氏は易々と博士号ももらえる資格があるといってもよいのであったが、世事魔多く底には底であって、不幸にもその栄冠を贏ち得なかったばかりでなく、たちまち策動者の犠牲となって江州は琵琶湖畔彦根町に建てられてある彦根中学校の教師として遠く左遷せられる憂目をみたのは、憐れというも愚かな話であった。