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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁
喜兵衛は苦笑し、「それでは館からも人を出しましょう」と云った。久兵衛というのは怠け者で、骨惜しみをする者のことをかぼねやみというのだが、――十五歳のときに小屋を出奔し、去年の秋に帰って来た。年は二十八か九になるだろう。相変らず怠け者のうえに、酒を飲むことと、酔って乱暴する癖を身につけて来た、と喜兵衛は語った。
ふじこというのは文造の娘で十八歳になる。母親が亡くなって、いま三人の弟妹と、父親の世話をしているが、縹緻もかなりいいし、男まさりのさっぱりした気性で、父があとをもらうまでは嫁にはゆかない、と云い張っている。久兵衛の嫁になるとは信じられないが、事実とすれば久兵衛におどされたのかもしれない、と喜兵衛は云った。
「しかし、その娘が船岡についていったというが」と周防は訊いた、「おとつい出ていったまま帰らないと云っていたが、それはどういうことだ」
「なんと申したらよろしいか」と喜兵衛は苦笑した、「御前はああいう御性分ですから誰にも好かれます、特に女たちがそうで、やまがの娘などもよく御前につきまとっているようです、決して珍らしいことではございません」
「それで、まちがいはないのか」