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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁
以上。
綱宗(書判)
周防どの
甲斐は尚なお書きのところを、ややしばらく見まもっていた。周防は声をひそめ、「その文字をよく読んでくれ」と云って、眼をつむり、囁くように暗誦した。
「――二三日ちゅうに、ここもとへまかり出で候とも、かよう、われら書状を遣わし候により、まかり出で候など、備前へ申されまじく候、……大町などにさえ、こんな気兼をしていらっしゃる、伊達陸奥守六十万石の大守たる御身で」
甲斐は手紙を巻きおさめ、周防のほうへ押しやりながら、「両後見へ申しいれたいと仰しゃるのは、どういうことなんだ」と云った。
「第一は、御自分が無実であることを、幕府へ訴えたいと仰しゃる」
甲斐は眼を伏せた。
第二は、自分は現在でも「逼塞」というかたちで、亀千代に会うことはもとより、家臣たちと思うままに会うこともできず、保養のため外出する自由もない。これは不当である。亀千代が家督すると同時に、自分は「隠居」になった筈であるから、それだけの自由を与えてもらいたい。第三は、三沢初を正室として披露したい、右の三カ条だった、と周防は云った。
「乱暴はなさらなかったか」と甲斐が訊いた。