輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 頁
また虚空蔵へ登ってっちまったですよ、と平助が答えた。
「よし、飯を喰べてゆけ」
甲斐はそう云いながら、周防を送るために土間へおりた。
「おらたちは帰るです」
「飯を喰べてから帰れ」と甲斐は云った。
周防と甲斐は小屋を出た。山の尾根へ登ると、空は鼠色の厚い層雲に掩われ、西のほうに一とところ、低く、朱と金色に縁取られた雲の切れ目があって、それが、丘陵のうち重なる広い山なみを、その稜線だけ錆びたはがね色に、染めていた。
周防が立停り、甲斐もその脇に立停った。二人は蔵王を眺めやった。蔵王は西側が金色に輝き、その半面が黒ずんだ紫色に昏れていた。紫色の部分はすでに眠りかけているようにみえ、金色に輝いている半面は、一日のなごりを惜んでいるように思われた。
「律のことを聞かせてもらえないか」と周防が云った。
それは、蔵王の峰からでも呼びかけるように遠く、静かに低い声であった。
「済んだことだ」と甲斐も同じように答えた。
周防は山を見たまま云った、「ではもう、しばらく会えないな」
甲斐は額に皺をよせただけであった。
周防は口の中で「どうか一日も早く」と祈るように云った。
「此処から二人で、また蔵王を見ることができるように」