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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 頁

青空文庫

」

「じゃあ、母さんが俊ちゃんを可愛がるのも、嘘じゃないんだろう。」

恭一はまた考えた。そして、

「それも、僕には、はっきりわかんないさ。」

次郎は物足りなさそうな顔をして、默りこんでしまった。

二人はそれから、やたらに煎餅をかじりはじめた。もう日が暮れかかって、ただでさえうす暗い部屋が、一層暗かった。その中で、煎餅をかじる音だけが、異様に、二人の耳に響いた。

菓子鉢も間もなくからになり、部屋はしんとして寒かった。しかし、二人はいつまでも階下におりようとはせず、机に頬杖をついたまま、からになった菓子鉢の底に、ぼんやりと眼をおとしていた。

そのうちに、梯子段をのぼる重い足音がして、俊亮がのっそりと部屋にはいって来た。次郎は、あわてたようにいずまいを正して、ぴょこんとお辞儀をした。

「来たのか。」

俊亮は、それだけ言って、つっ立ったまま、しばらく二人を見おろしていたが、

「二人とも階下におりたらどうだ。ここには火もないだろう。」

次郎は、すぐ立ちあがりそうにして、恭一を見た。恭一は、しかし、いやに鋭い陰気な視線を次郎にかえしただけで、相変らず頬杖をついたままだった。