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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 頁

青空文庫

大沢は、しかし、そう言ってしまうと、

「じゃあ、失敬。」

と、二人にあいさつして、さっさと部屋を出て行った。恭一はすぐあとについて、階段をおりた。そして次郎が自分にかえって、急いで下におりた時には、大沢は、もう、門口を出ているところだった。

大沢を見おくってから、二人はまたすぐ二階に行ったが、次郎は机に頬杖をついて、何かじっと考えこんだ。その様子を見ていた恭一は、しばらくして言った。

「次郎ちゃん、大沢君って、偉い人だと思わない?」

「思うよ。だけど年とっているなあ。」

「中学校にはいる前に、三年も工場で仂いていたんだよ。」

「ふうむ、そうか。」

「だから、よけい偉いんだよ。」

次郎の頭には、一年おくれて中学校にはいった自分のことが、自然に浮かんで来た。が、彼の考えは、すぐまたもとにもどっていった。

(自分は、大沢に、心にもない偉がりを言ったつもりは少しもなかった。しかし、自分の言ったことに、ほんとうに自信があったかというと、そうでもなかったようだ。)

彼は何だかそんな気がして、不安だった。しかし、一方では、大沢に励ましてもらったことがうれしくてならなかった。